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雑誌会

2026.03.14

親水性有機レドックス高分子電極材料

電極材料のお話です。

Hydroquinone-substituted polyallylamine: redox capability for
aqueous polymer–air secondary batteries and recyclability
Kouki Oka 1,2,3 ● Showa Kitajima1 ● Kohei Okubo 1 ● Kiyotaka Maruoka4 ● Yuta Takahashi4 ● Yoko Teruchi4 ●
Minoru Takeuchi4 ● Kazuhiko Igarashi4 ● Hitoshi Kasai1
Polymer Journal (2025) 57:1239–1244

(本文)
https://www.nature.com/articles/s41428-025-01085-x

(補足情報)
https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs41428-025-01085-x/MediaObjects/41428_2025_1085_MOESM1_ESM.docx

既に研究の概要は下記に記されています。

(リサイクルが簡単な電極材料を開発、資源の制約を乗り越えた電池の開発に期待)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20250826_01web_recycle.pdf

研究の背景については、上記資料より転記致します。
『有機レドックス高分子は、地球上に豊富に存在する元素(炭素、窒素、酸素など)から構成され、電荷を迅速に貯蔵できることから、高い電流密度で電荷を貯蔵できる電極材料として精力的に研究が進められています。 近年、電解液(注5)に水溶液を用いることで発火の危険がなく、環境に優しい水系電池が注目されています。金属電極を用いた水系電池では、充放電に伴い電極表面に針状結晶が形成され、短絡による容量の低下を招くことが課題です。その解決案として、針状結晶が生じない有機電極(注6)で金属電極を置き換え、性能を向上させる研究が報告されてきました。
しかし、有機電極の材料として有望な有機レドックス高分子は疎水性であることが多く、水系電池に応用するためには、これらに親水性を付与する必要があります。また、プラスチック汚染の深刻化に伴い、高分子材料には、十分な性能を発揮するだけでなく、使用後に分解できることが求められています。しかし、多くの有機レドックス高分子は、非常に強固な構造を持つため、分解には高温処理などの大量のエネルギーが必要になるという課題がありました。』

ヒドロキノンの部位を持つポリアリルアミン(PDA)の作り方です。(Scheme1)
(1) 2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2.54mmol、0.39g)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(2.54mmol、0.70g)を10mlのDMF中に入れる。
(2) このDMF溶液中に15%のポリアリルアミン(Mw=1600、日東紡、 
https://www.nittobo.co.jp/business/materialssolution/chemical/about/products_paa.html )を10分間かけて滴下して添加。
(3) 反応混合液をアセトン中へ注ぐと沈殿ができる。
(4) 沈殿を集めてろ過し、アセトニトリルとアセトンで洗浄すれば茶色の粉としてPDAが得られる。

なお、ヒドロキノン部位の導入率は反応温度を変えることで、16~50%の範囲で調節できたようです。(表1)収率も良く表1中、特に4番目(65℃)の場合は84%だったようです。
検討した全てのPDAはDMF、DMSO、NMPには溶解し、水には溶解しなかったようです。

得られたPDAで厚み610nmのフィルムを作製し、0.5Mの硫酸水溶液(濃度=5%程度)-0.2Vの定電位でクロノアンペロメトリーの評価を行っています。(図2a)
クロノアンペロメトリーについて、『クロノアンペロメトリー (chronoamperometry) は,数多い電気化学測定法の中でも最も基礎的な手法の1つである.「クロノ」 (chrono-)は時間を表す接頭語であり,「アンペロメトリー」は電流 (-ampero-)測定法 (-metry).文字どおりこれを訳すと,電極を流れる電流を,時間の関数として測定し,解析する方法, となる.しかしながら,サイクリックボルタンメトリーをはじめとするほとんどの電気化学測定法は,全て時間の関数として測定するものなので,この訳では非常に広範に過ぎる.電気化学測定法でクロノアンペロメトリーという場合には,通常「電位ステップに対する電流の過渡応答解析」すなわち定電位ステップ法を指す. 』とあります。

(クロノアンペロメトリー)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/electrochemistry/68/1/68_68.63/_pdf

(硫酸(1~50%)の濃度と密度早見表)
https://direct.hpc-j.co.jp/shop/pages/sulfuric_acid01.aspx

測定の結果、電子の拡散係数は1.7×10−13 cm2 s−1となったようです。このことから電子自己交換反応の速度定数は3.5×10M–1 s–1と推定されたようです。この値は過去例と似たようなものであるらしく、『中程度の速度特性で動作するであろう』と、推測したようです。

表1中、4番目の反応温度が65℃で得られたPDAの43%の溶液(おそらく水溶液)を用い、カーボン電極に応用して、0.5Mの硫酸水溶液中で0~+0.8Vの範囲で電流を測定したようです。
図3bには充放電を示すカーブが描かれており、電位が+0.4Vのところで、カーブは水平っぽくなって、安定化したようです。容量も197mAh/gと理論値である199mAh/gの99%とほぼ理論値と言っても良い結果だったようです。これについて、従来の(有機物質を用いた)電極では疎水性だったのにたいして、今回のPDAを用いた電極は親水性が促進され静電反発が起こり、容量はほぼ理論値と同じくらい大きくなったようです。
ここで静電反発と容量との関係についてです。
まず、クーロンの法則です。『クーロンの法則 はもちろん同符号同士の電荷の斥力についても当てはまります。』とあります。
(5分でわかる!クーロンの法則)
https://www.try-it.jp/chapters-8559/sections-8560/lessons-8565/

そして、クーロンの法則は『距離の2乗に反比例、電気量の積に比例』です。
この電気量=容量となるので、電荷の斥力と容量は比例関係にあるということです。

また、充放電を100回繰り返しても変化はなく、十分な耐久性も確認できたようです。(図3a)

続いて空気電池を試作し、評価しています。
空気電池については、『空気電池とは、プラス極の活物質(電子の受け渡しをする物質)に酸素、マイナス極の活物質に金属を用いる電池のことです。金属空気電池とも呼ばれています。プラス極の活物質が空気中の酸素であることから、活物質を充填する必要がなく、マイナス極活物質である金属を電池内に大量に補充しておくことができるというのが特徴です。空気中の酸素をプラス極の活物質として使用するため、充填する必要がありません。そのため同容量の他電池と比較し、小型で軽量というメリットがあります。』とあります。
(空気電池っていったいどんなものなの?)
https://blog.eco-megane.jp/%e7%a9%ba%e6%b0%97%e9%9b%bb%e6%b1%a0/

上記では、『マイナス極の活性物質に金属』とありますが、今回の研究例では金属の代わりにPDAを用いたPolymer electrodeになるということです。
模式図は図4に描かれています。
結果が図5に描かれていますが、電位が0.5Vの場合、容量が197mAh/gとクロノアンペロメトリーでの場合と同様、あるいはそれ以上に理論値に切迫していたようです。またクロノアンペロメトリーでの場合と同様に、充放電を100回繰り返しても変化はなく、十分な耐久性を有していたようです。

最後にPDAの分解性を調べています。
15Mの硫酸あるいは酢酸に浸漬して調べたようです。
なお、15Mの硫酸は濃度が84%で、実質98%の濃硫酸とほぼ同じと言えます。

(硫酸(51~98%)の濃度と密度早見表)
https://direct.hpc-j.co.jp/shop/pages/sulfuric_acid02.aspx

結果が表2に示されています。
濃硫酸で72時間浸漬すれば91%まで分解できたようです。

所感です。
背景のところで述べられていたように、従来は『多くの有機レドックス高分子は、非常に強固な構造を持つため、分解には高温処理などの大量のエネルギーが必要になるという課題がありました。』であったことに対して、今回の研究例では非常に簡便な方法で目的物を得ることができ、大きな進歩と考えます。また、得られたPDAを用いて二次電池の材料の試作を行い、非常に優れた電気的特性と耐久性を示したことは非常に興味深いです。
しかしながら、リサイクルのところで、濃硫酸に浸漬しなければならない点は非常に危険です。浸漬した後の洗浄も大変です。残念ながら、ここの部分はまだ非現実的と考えます。著者はrecyclabilityという文言を入れ、上記資料でも『リサイクルが簡単な電極材料を開発、資源の制約を乗り越えた電池の開発に期待』というタイトルを掲げていますが、おそらく補助金を取るための手段だったのではないか?と思いますが…

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