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2026.04.11

お前~、電子タバコやっているやろ~???

電子タバコを使っている学生と、そうでない学生との違いを唾液をFT-IRで測定して調べた研究例です。

Comparative FT-IR Spectroscopy Salivary Profiles of University
Students: E‑Cigarette Users vs Nonusers

Camila Lopes Ferreira, Emanuelly Caroline dos Santos Rocha, Yasmin Ferreira Azevedo dos Reis,
Raphael Zanon Guimarães, Sara Maria Santos Dias da Silva, Rodrigo Teodoro Gomes de Paiva,
Jean Patrick dos Santos Moraes, Laurita dos Santos, and Luis Felipe das Chagas e Silva de Carvalho*

ACS Omega 2026, 11, 1953−1961

(本文)
https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acsomega.5c10219?ref=article_openPDF

医療関係の検査機器と言えば、レントゲン、エコー、MRIとかを思い浮かべます。そして、FT-IRとなればピンと来ないかもしれません。
ただ、以前、尿路結石が出たことがあり、泌尿器科で出してもらったことがあります。
よくあるシュウ酸カルシウムでした。その判定に使ったDATAをもらったのですが、明らかにFT-IRのチャートでした。

実のところ、これまでタバコというものを吸ったことがありません。
電子タバコとはどういうものでしょうか?
どうやら従来のタバコに代わるものとして、新型タバコというものがあり、その中に『電子タバコ』と『加熱式タバコ』があるようです。
『電子タバコと加熱式タバコの大きな違いは、“タバコ葉の有無”です。タバコ葉を使っていないのが電子タバコ、タバコ葉を使っているのが加熱式タバコと区別されています。』『電子タバコは、グリセリンやプロピレングリコール、香料などが入った「リキッド」と呼ばれる液体を、「アトマイザー」という装置で加熱してベイパーを発生させます。基本的に、リキッドにはニコチンは含まれておらず、ニコチンを含むリキッドは日本国内での販売が禁止されています。』とあります。
(本当は怖い新型タバコ)
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/electronic_cigarette/

また電子タバコも健康への害があるようです。
『電子タバコは加熱式タバコと違い、タバコ葉を使用せず、ニコチンやタールも含まないため、口腔内への影響は少ないのではと考えられていました。
しかし、米ニューヨーク大学の研究チームが国際学術誌において発表した論文によると、電子タバコ利用者の口内には、歯周病を進行させる細菌の割合が非喫煙者に比べて高かったことが明らかになっており、時間とともに歯周病を悪化させる可能性があるとの報告がされています。
またその論文では、電子タバコ利用者の口内は、紙巻タバコ喫煙者よりは健康的ですが非喫煙者よりは健康的でない可能性があるとされ、紙タバコほどではないにしろ、口腔内にも悪い影響があることがわかりました。
また、リキッドの主成分である「植物性グリセリン」と「プロピレングリコール」は安全性が高い物質とされていますが、あくまで食品添加物として使用する分には安全性が高いとされているのであって、加熱して肺の奥に吸い込んだ時の安全性まで保証されているわけではありません。
アメリカでは、電子タバコによるものと疑われる肺疾患等の健康被害症例も報告されていますので、リスクをしっかり理解した上で使用する必要があります。』とあります。
(電子タバコの健康への害)
https://c-dental.com/diary-blog/12980

今回の研究例はそのような背景があるということです。

まず、30人の電子タバコ利用者(グループT)、30人のそうでない学生(グループS)の合計60人を対象にして行いました。
まず水でうがいをしてから、10mlの唾液を取り、-80℃で保管したようです。

統計処理には『サポートベクターマシン』と呼ばれる手法を用いたようです。
これについては、「最も近い点(サポートベクター)までの距離が遠くなるよう決定境界を決める」分類手法を、サポートベクターマシンと呼びます。
(機械学習の定番「サポートベクターマシン(SVM)」を高校生でもわかるよう解説)
https://qiita.com/c60evaporator/items/8864f7c1384a3c6e9bd9

『「閾値を変えるたびに、どのモデルが一番良いのか判断に迷う…」 そんな悩みを解決してくれるのが、今回ご紹介するROC曲線とAUCです。』とあります。
(【評価指標】ROC 曲線と AUC についてわかりやすく解説してみた)
https://www.kikagaku.co.jp/personal/blog/roc-auc

先に結論を申し上げるようですが、実はなかなか明確な結果とはならないこともあり、統計的手法に頼ったようです。

FT-IR測定の結果が図1に出ています。
見たのは下記の領域だったようです。(a) 3050−2800 cm−1, (b) 1720−1490 cm−1, and (c) 1200−900 cm−1.
更に図2にはTグループ(電子タバコ使用者)とSグループ(未使用者)の結果が出ています。
正直、何がどう違うのか?難しいところです。
一応、本文には『唯一3273cm-1にTグループだけ吸収ピークがあった』ということのようです。更に、3288 cm−1および2851 cm−1でわずかなシフトが観察されたようです。アミド領域(1720−1490 cm−1)では、両群とも2つの領域が中心なったようですふぁ、Tグループにおいては1649および1544 cm−1にピークが見られ、未使用者では1640および1546 cm−1に、タンパク質関連の振動モードに微妙な変化が生じていたようです。ここで、アミドIおよびIIバンドのわずかな変位(1640 → 1649 cm−1 および 1546 → 1544 cm−1)は、唾液タンパク質の第2次構造の変化を示唆していると考察しています。これらの領域におけるシフトは、一般的にα-ヘリックスおよびβ-シート含有量の変化、タンパク質の展開、あるいは外因性化合物との相互作用の増加に関連しているらしく、過去の研究例では、電子タバコエアロゾルへの曝露が口腔内のタンパク質完全性、酸化バランス、微生物相互作用に影響を与える可能性が示されているようで、FT-IRによって検出されたタンパク質修飾がエアロゾル化化学物質に対する初期の生化学的反応を反映している???という仮説もあるみたいです。そして、指紋領域(1200−900 cm−1)では、TグループもSグループも1077 cm−1に一致するピークがあり、強度の差はわずかだったようです。
そして、表2、図3、表3、表4、図5、表6、図7、図8は統計的処理により描かれた表や図ではありますが、なかなか明確、決定打とはならなかったようです。

所感です。
今回の検討結果、なかなか明確な結果が得られず、かなり苦しんだように思えます。
ただ、検査方法として、採取が簡単な唾液で、測定もFT-IRという、これまた簡単な方法を採用したことは、現実性を踏まえた上で良かったと考えます。
おそらく、再現性など、測定そのものには問題はなく、またその検証も容易なFT-IRを笑んだことも決して悪くはないと考えます。
ただ、仮に電子タバコ利用者とそうでない人の区別が簡単にできるようになったとします。そのご利益は何かあるのでしょうか?これがお酒を飲んだ飲まない、であるならば、車を運転するか?否か?にも繋がりますが、電子タバコ云々はどうなのでしょうか?上記のように、電子タバコも健康への害があるみたいですので、そもそも、電子タバコすら利用しないってことが健康には良いはずです。その一方で、おそらく電子タバコは周囲への影響は少なく、副流煙もないので、被害を受けるとしても利用している人だけです。そんな状況で、『お前~、電子タバコやっているやろ~?』と見つけ出す意味はどこにあるのか?と思ってしまいました。

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