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2026.07.20

天然ゴムで高分子電解質膜

天然ゴム粒子の表面に親水性の連続ナノチャンネル層を設けることで、高分子電解質膜を試作したお話です。

Bio-based polymer electrolyte membrane with
nanomatrix channel prepared from natural rubber

YOSHIMASA YAMAMOTO1*
1 National Institute of Technology, Tokyo College, 1220–2 Kunugidamachi, Hachioji, Tokyo 193–0997, Japan

e-Journal of Soft Materials Vol 14. pp 8–9 (2025)
 
(本文)
https://www.srij.or.jp/srij_wp/wp-content/themes/srij_theme/assets/pdf/e-jsm/03_02_Opinion_Yamamoto_finish_ma.pdf

まず、高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane, PEM)についてですが、『イオン伝導性を持つ高分子材料で構成された薄膜であり、主に燃料電池や電気化学デバイスの電解質として用いられます。固体でありながら高いイオン伝導性を有し、電解液の漏れがないため、軽量かつ高効率なエネルギー変換を可能にします。』とあります。

(高分子電解質膜とは)
https://www.kakuhunter.com/media/article/4a1035da644b87d99fa40dd20738893a40365f62.html

この高分子電解膜、ここではプロトン輸送膜になり、ナノチャンネルを形成することにより得られるようです。そのコンセプトとして、直径1μmの疎水性の粒子の上に親水性の高分子を乗せることで、連続的なナノチャンネルを形成するというものらしいです。

 そこで、今回の研究例は天然ゴムを土台に使うことで、SDGsを意識した高分子電解膜の開発を試みたようです。

まず、バイオゴム状軟質高分子膜は、図1に示されるように、穏やかな条件で天然ゴムにp-スチレンスルホン酸エチルをグラフと共重合させ、その後水酸化ナトリウムで加水分解、けん化させて作製したようです。

p-スチレンスルホン酸エチルについては、
(p-スチレンスルホン酸エチル、ETSS)
https://www.tosoh-finechem.co.jp/product/etss

グラフと共重合については『グラフト共重合体 (graft polymer, copolymère greffé, Pflopf-copolymerisat) ということが俄かに注目を浴びてきた。グラフトの意味は「接ぎ木」ということで、幹 (trunk, back-bone, stock polymerなどと呼ばれる) になる重合物に任意の枝をつけた高分子重合物のことである。』とあります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/28/10/28_10_591/_pdf/-char/ja

得られたグラフと共重合体はゴムNMR法によって、構造解析したようです。
ゴムNMR法については、
(NMR法による架橋ゴムの構造解析)
https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2018/p215.pdf

図2は枝である側鎖(PSS)の含有率が6.5%、5.3%、4.4%の場合を透過型電子顕微鏡で観察することで比較したようです。図2aに見られるように、6.5%の場合は、直径約1μmの土台の上にPSSによる厚みが約10nmの連続したナノチャンネルが形成されたようです。一方、PSSの含有率が5.3%の場合は図2bに示されるように、ナノチャンネル部分は部分的に繋がらなかったようです。更にPSSの含有率が4.4%になると、PSSが50~100nmの直径でダマのようになり、不連続なナノチャンネルとなったようです。

 表1はPSSの含有率とイオン交換容量(ion exchanged capacity (IEC))やプロトン伝導性(proton conductivity (σ))を50℃で測定した結果です。現在最も一般的な高分子電解質膜であるナフィオンとも比較しています。

ナフィオンについては下記へ
(燃料電池の要!高分子電解質「ナフィオン」とは)
https://m-hub.jp/chemical/1959/117

PSSの含有率が4.4%⇒5.3%⇒6.5%と上昇するに連れて、イオン交換容量も0.11meq/g⇒0.15meq/g⇒0.22meq/gと上昇したようです。同様にPSSの含有率が6.5%の場合、プロトン伝導性も8.1×10^(-3)S/cmまで上昇したようです。ただナフィオン117の4.6×10^(-2)S/cmまでは達しなかったようです。しかしながら、スルホン酸の当量単位でのプロトン伝導性は今回の研究例でPSSの含有率が6.5%の場合、2.6(S/cm)/meqとなり、ナフィオン117の1.9(S/cm)/meqの1.4倍となったようです。

図3はPSSの含有率と応力-ひずみ曲線の関係を示した図です。
結果として、土台の天然ゴムは破壊応力が3.4MPaであったのに対して、PSSの含有率が6.5%の場合は6.9MPaと上昇し、PSSの導入により、プロトン伝導性のみならず、引張強度も上昇したようです。

所感です。

PSSの含有率を上げた結果、プロトン伝導率が上昇したのは、図2に見られた構造的な安定性によるものか?あるいは、親水性が増加したためなのか?ですが、おそらくその両方と考えます。
しからば、PSSの含有率を6.5%から更に上昇させるとどうなるか?になります。
グラフト共重合が困難になる可能性はありますし、引張強度も頭打ちしていることから、構造的に脆くなる可能性もありますが、やってみる価値はあると思います。
更に耐久性などは、未知数であり、このあたりの検証も必要且つ重要となると思われます。
なお、比較用に用いたナフィオンはフッ素を原料としているため、今後規制の対象となる可能性があり、今回の研究例を更に発展させれば、ナフィオンの代替えとなる可能性もあると思います。
(PEM形水電解では東レや東芝系にチャンス、PFAS規制が追い風に)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02655/121400004/

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